免許はあっても、運転は20年近くしていない。だから車は借りず、この9月に始まったばかりのAIデマンドタクシーと、ホテルの送迎と、自分の足で島を回ることにした。臨時休業の店が2軒、上演のなかった屋敷が1か所、満席の店が3軒。そのたびに組み直した先で、流人の歴史と島の食卓が、一本の糸でつながっていった。
- 往路
- 9月23日 NH1891 羽田7:35発、八丈島8:30着
- 復路
- 9月25日 NH1894 八丈島13:50発、羽田14:50着
- 宿
- 八丈ビューホテル 別館「常春」海側和室、朝食付き
- 足
- ホテルの送迎、AIデマンドタクシー、徒歩
島をどう回ったか
番号は立ち寄った順番。色は黄八丈の三色で、刈安の黄が1日目、タブノキの樺が2日目、泥染めの黒が3日目。
- 1日目 9月23日
- 2日目 9月24日
- 3日目 9月25日
- 着いたら臨時休業
- 宿空ホテルと空港
一日目9月23日(水・秋分の日)
晴れ時々曇り
5連休の最終日。始発便で島に着いて、樫立から大賀郷へ。島の暮らしと流人の歴史に、最初に触れた一日。
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7:35
羽田を発つ
第2ターミナルの511番ゲートから、バスで沖止めの機体へ。プロペラ機だと思い込んでいたら、待っていたのはボーイング737-800、167席。向かい風を受けて離陸し、55分で島に着く。

511番ゲート。表示板には八丈島行き7:35。 -
8:30
八丈島空港
空港を出ると、駐車場の向こうに八丈富士。手前にはヤシが植わっている。ホテルの送迎で八丈ビューホテルへ。チェックインは15時なので、荷物だけ預けてすぐに出る。

空港の駐車場から見た八丈富士。 
ホテルの高台から。森の先に海が広がる。 -
10:00
1服部屋敷跡(樫立)
初めてのAIデマンドタクシーで樫立へ。樫立踊りと八丈太鼓の上演は前日までの予約制で、この日はなし。代わりに生のパッションフルーツジュースを一杯。
屋敷の建物は残っていないが、流人の近藤富蔵が築いたとされる玉石垣と、樹齢700年ともいわれる蘇鉄が残る。しまぽ通貨のアプリ登録も、この台地の上で済ませた。

看板の後ろが玉石垣。海岸の丸石を一つずつ積んでいる。 -
11:00
2ふれあいの湯
樫立向里温泉。観光客の少ない静かな湯で、夜明け前からの移動の疲れを落とす。
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12:12
しまぽ通貨を買う
第2期の販売は正午に始まった。12分後、1セットを確保。7,000円で1万円分が使える。
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12:20
3八島(大賀郷)
目当ての定食屋「まごら」は満席。島で唯一の自家製麺の店、八島で特製ラーメン。

八島の特製ラーメン。 -
13:30
4八丈島歴史民俗資料館
流人の歴史と黄八丈。ここで知った流人の話が、そのあとの3日間の伏線になった。庭には、茅葺きの高倉が建っている。

資料館の木造の建物。 
高床の高倉。 歴史や文化をしれて面白かった現地から
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15:00
チェックイン
別館「常春」の海側和室。10畳に3畳の次の間がつく。
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16:20
5八丈植物公園
キョンが飼われていた。中国南東部と台湾が原産の小さなシカで、角がないのでメスらしい。額のV字と目の下の切れ込みは、縄張りの印をつける臭腺。近縁のインドキョンは染色体がメス6本・オス7本と、哺乳類でいちばん少ない。

柵越しに、すぐ近くまで寄ってきた。 -
17:00
6南原千畳岩海岸
八丈富士の溶岩が海まで流れてできた黒い岩場。空は一面の雲で、八丈小島も頭に雲をかぶっている。夕日は難しそうなので、雰囲気だけ見るつもりだった。
今日は天気悪いから夕日は難しいけど、雰囲気だけ見てくる現地から

16:59。笠雲をかぶった八丈小島。 -
17:34
雲の下から、夕日
沈む直前、水平線と雲のすきまに赤い太陽が出た。場所は八丈小島の左手。数分のあいだ、秋分の夕日がほぼ真西の海に落ちていった。
秋分のこの日、太陽はほぼ真西、方位270°に沈む。南原から見た八丈小島は方位およそ290°なので、夕日は小島の左手に落ちる。小島にぴたりと夕日が重なるのは、4月中旬から8月下旬ごろ。

17:34。右が八丈小島、赤い点が太陽。

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17:46
宇喜多秀家と豪姫の像
千畳岩の園地に、宇喜多秀家と妻の豪姫の石像が並んで座っている。関ヶ原で西軍についた秀家は、八丈島に流された最初の流人とされる。豪姫は島に渡ることなく、金沢で生涯を終えた。島でようやく二人が並んだ形だ。

背後は雲をかぶった八丈富士。 -
18:30
7魚八家(三根)
第一候補の梁山泊は満席。朝から夜まで通しで開いている魚八家に予約を取る。デマンドタクシーは20時で終わるので、店の2軒隣の乗降ポイントから19:45の便を先に押さえた。支払いはしまぽ通貨で4,000円。

魚八家の握り。 
しまぽ通貨の支払い画面。店員に見せて完了。
二日目9月24日(木)
早朝にスコールのような雨、のち晴れ時々曇り
雨が上がると、島の南半分へ。光るキノコ、滝、底まで見える海、赦免を祝う料理のお品書き、太平洋を見下ろす湯。夜は島寿司の食べ比べになった。
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早朝
スコール
夜明け前、南の島らしい激しい雨。スマホの充電が切れていて、出発を9:40に遅らせる。
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10:10
8えこ・あぐりまーと(中之郷)
農産物の直売所とカフェ。暗室に、島に自生する光るキノコが展示されている。キノコの光は点滅せず、ずっと光り続けるのがホタルとの違い。

暗室の中で、傘がぼんやり緑に光る。 -
11:00
9裏見ヶ滝
ヤシとシダの茂る道を抜けて、滝の裏側を歩く。人の気配が消えるほど、森は南国の顔になる。

滝へ向かう道。 
裏見ヶ滝。 滝良かったよ現地から
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11:45
10中之郷古民家カフェ
昼はここの予定だったが、臨時休業。
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12:15
11乙千代ヶ浜(樫立)
次の候補の磯崎園は13時まで満席。空くのを待つあいだに、樫立の海岸へ下りる。溶岩の磯の一角をコンクリートで囲ったプールがあって、水は底の石まで透けて見えた。

12:40、乙千代ヶ浜。 12:24、浜へ下りる途中の見晴らし。2分の1のスローで。 -
13:00
12磯崎園(樫立)
1時間待って入った古民家の郷土料理店。お品書きが入れ子になっている。黒潮料理を土台に、寿料理、しょめ料理、御赦免料理と、祝いの格が一段ずつ上がる。流人の赦免を祝う御赦免料理は2名から。
一人旅なので、メニューにない島寿司(2,200円)を頼み、食後に島バナナのスムージー。

和紙に手書きのお品書き。右から黒潮料理、寿料理、しょめ料理、御赦免料理。 
磯崎園の島寿司。醤油に漬けた白身が飴色に光る。 -
14:40
13名古の展望台(末吉)
樫立から島の東の端、末吉へ。地区を二つまたいで1,500円。断崖の下に洞輪沢の漁港が見える。表紙の写真もここから。

柵の向こうは、ほとんど太平洋だけ。 
デマンドタクシーの画面。樫立から名古の展望台へ。 -
15:15
14みはらしの湯(末吉)
太平洋を見下ろす露天風呂。名古の展望台から近く見えるが、集落を回り込むので歩くと25分かかる。
いい湯だった現地から
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17:45
大吉丸へ
ホテルから歩くと、滑走路を回り込んで30分。行きと帰りのデマンドタクシーをまとめて予約した。予約できるのは同時に2件まで。

行きと帰り、枠いっぱいの2件。 -
18:00
15大吉丸(大賀郷)
島寿司8貫、明日葉の天ぷら、うみかぜ椎茸の天ぷら、島唐辛子のだし巻き。お酒は強くないので、ノンアルで。昼の磯崎園と合わせて、一日で島寿司を2軒食べ比べたことになる。

郷土料理のページ。島寿司は「甘めの酢飯にヅケとカラシ」。 ちょっとお腹いっぱいだなぁ現地から
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19:00
情け嶋を一杯
帰り際、店から情け嶋の古酒をお猪口に一杯。八丈島の麦焼酎。米が貴重だった島では、焼酎の麹も麦で作る。島に焼酎造りを伝えたのは、幕末に薩摩から流されてきた丹宗庄右衛門とされる。流人の話が、最後に酒の一杯で届いた。
満腹になって、予定より早い便でホテルへ戻る。
三日目9月25日(金)
晴れ時々曇り
最後の朝。明日葉そばで締めるはずが、店は閉まっていた。干物工場の食堂で、島の保存の知恵をもう一度。
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7:00
ホテルの朝食
普段は朝ごはんを食べないが、朝食付きのプランなのでしっかりと。土産はホテルで買った。ロビーの窓いっぱいに、朝の海が広がっている。

ホテルのロビー。窓の外に海。 -
10:00
空港へ
チェックアウトして、ホテルの送迎で空港へ。大坂トンネル展望台は見送った。
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11:25
16名代一休庵
明日葉を練り込んだそばで締めるつもりが、体調不良による臨時休業。中之郷のカフェに続いて2軒目。少ない人数で店を回す島では、一人が休めば店が閉まる。

「本日、体調不良により臨時休業」。 -
11:30
17藍ヶ江水産 地魚干物食堂
干物工場の直営食堂に開店と同時に入る。注文はテーブルのQRコードから。飛行機の前なので、匂いが残るくさやは避けて、漬け丼定食と自家製しそジュース(2,450円)。島の魚を醤油に漬けるのは、島寿司のネタと同じ保存の知恵。

漬け丼定食。味噌汁から湯気が立っている。 
おすすめの3品。いちばん上を選んだ。 -
13:50
羽田へ
NH1894で島を離れる。帰りは左側の窓の席。14:50、羽田着。

13:09、搭乗を待つ。 お腹がはち切れそう搭乗を待ちながら
旅をつないだ二本の糸
計画して回ったわけではないのに、立ち寄った先が同じ話の続きになっていた。
流人の糸
- 資料館で、流刑の島としての八丈島を知る 1日目
- 服部屋敷跡で、流人の近藤富蔵が築いたとされる玉石垣を見る 1日目
- 南原千畳岩で、並んで座る宇喜多秀家と豪姫の像に会う 1日目
- 磯崎園のお品書きで、赦免を祝う御赦免料理を見つける。一人では頼めなかった 2日目
- 大吉丸で、流人が伝えた島酒、情け嶋を一杯 2日目
- 行けなかった場所 宇喜多秀家の墓。34歳で流され、赦免されないまま83歳でこの島で亡くなった
ないものから生まれた味
- 島寿司
- 冷蔵庫のない時代、魚を醤油ダレに漬けて保たせた。わさびの代わりに練りがらし。
- 漬け丼
- 島寿司のネタを、そのままご飯に乗せた形。
- くさや
- 塩が貴重な島で、同じ塩水を使い回すうちに発酵液になったといわれる。
- 麦ぞうすい
- 米の代わりに麦が主食だった。磯崎園の黒潮料理の一品。
- 麦麹の島酒
- 米がないから、麹も麦で。情け嶋は麦焼酎。
島で気づいたこと
その場で感じたことと、あとから調べて分かったこと。
- 天気
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3日間とも晴れ時々曇り。24日の早朝だけ、スコールのような激しい雨が降った。
- 月と星
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今回は月明かりが明るく、星空は弱めだった。
満月は9月26日から27日にかけての夜。滞在中は満月目前の明るい月(月齢11〜13)が、夜の大半を照らしていた。星空が目当てなら、新月の前後がいい。
- 海
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海が綺麗。透明度がすごい。
島を洗う黒潮は栄養分が少なく、プランクトンが少ないぶん水が澄む。深い藍色が黒っぽく見えるのが、黒潮という名の由来ともいわれる。乙千代ヶ浜では、磯の岩の間まで青く透けていた。

乙千代ヶ浜の磯(2日目)。 - 植物
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植生は南国。人がよくいる場所は南国6に日本4くらい。人のいない場所ほど、南国らしさが濃くなっていくグラデーションがある。

ホテルの庭。ハイビスカスとヤシに、芝生と生け垣。 
中之郷の集落。玉石垣と苔。 
裏見ヶ滝の森。シダが岩を覆う。 人がよくいる場所 南国6:日本4人がいない場所 ほぼ南国暮らしの場所には本土から持ち込まれた作物や庭木が混じる。八丈島は観葉植物の産地でもあり、フェニックス・ロベレニーのような南国の植物が畑に並ぶ。人の手が入らない谷ほど、大きなシダが茂る島本来の森の顔になる。
- 電波
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5Gはなく4Gのみ。場所によっては弱いか、入らない。
それでも樫立の台地の上で、しまぽ通貨のアプリの本人確認まで通った。
- しまぽ通貨
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1セット7,000円で1万円分。「どこでも使える」7,000円分と「宿泊施設専用」3,000円分に分かれている。
どこでも分だけを使い切ると、払った額と同じになる。3,000円分の上乗せは、島に泊まって宿に払うときに初めて受け取れる設計で、公費を島の宿と店に落とす仕組みになっている。今回は宿泊費が前払いだったため、宿泊専用分を宿泊費には充てられなかった。有効期限は2027年3月22日。電子しまぽの公式サイト
- 宿
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泊まった八丈ビューホテルは、テレビの台風報道でよく映る場所らしい。YouTubeにも映像がある。
高台から海を見渡せる立地で、島の玄関口の空港にも近い。台風が近づくと、ニュースにこのホテルがたびたび登場する。この映像は2023年8月、台風7号の接近を伝えたニュースで、キャンセルが相次ぐ島の様子を八丈ビューホテルの支配人が語っている。
引用
YouTubeで再生
台風接近を伝えるニュースに、八丈ビューホテルが登場する。 出典:TBS NEWS DIG Powered by JNN「期待と不安の“お盆休み”…「台風7号」週明け接近 本州直撃か 八丈島のホテルはすでに半数キャンセル【news23】」2023年8月、YouTube(youtube.com/watch?v=QHOvHG915rI)。YouTubeの埋め込み機能で表示。 - AIデマンドタクシー
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予約する側は楽だった。運転手は専用端末に地図と予約状況を映して走っていたが、乗車の記録は紙の表に手書き。画面と端末が、もう一つ足りないのかもしれない。
「AIデマンドタクシー」と言うと、自動運転の車だと思われることがよくあるらしい。

1日目19:42、魚八家からの帰りの車内。メーターの横に据えた端末に、SAVSの地図と予約が映っている。動画から切り出した一コマで、乗客名はぼかした。 実際に運転するのは人の運転手で、運行は島のタクシー会社の愛光観光が担っている。「AI」が受け持つのは配車計画づくり。予約をもとにリアルタイムで配車を計算する、相乗り(乗合)が前提の仕組みだ。端末に映る「SAVS」は、未来シェアのAI配車システムの名前。運転手向けの画面には、AIが決めた次の行き先が地図で出る。
令和8年度の実証運行(9月14日〜1月11日)。9月の島外利用は日中900円、18時以降1,200円で、地区をまたぐごとに300円。予約は同時に2件まで。運行は20時まで。9月27日までの延長期間だったおかげで、夜の外食の帰りに間に合った。配車はデジタル、記録はアナログ。実証運行らしい継ぎ目が見えた。八丈町の案内ページ

次の南の島は、東京で
沖縄も魅力的だけれど、最近は都市化が進んでいる。八丈島は羽田から55分。それでいて、人のいない谷に入れば南国の森があり、海は底まで透けていた。
まだまだ自然が残っている東京の島々への旅が、いまはおすすめかもしれない。
東京都には、伊豆諸島と小笠原諸島に人の住む島が11ある。しまぽ通貨は、その11島の旅で使える。
次に来るなら
旅の数字
| 車の運転 | 0 km |
|---|---|
| AIデマンドタクシー | 10本以上 |
| 島寿司 | 2軒 |
| 温泉 | 2湯 |
| 臨時休業に当たった | 2軒 |
| 満席だった | 3軒 |
| 見られた夕日 | 数分 |
| しまぽ通貨 | 1セット |
| 島酒 | お猪口に1杯 |
| 撮った写真と動画 | 120枚と2本 |



